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校務の情報化推進セミナー2012 仙台会場 セミナーレポート
2012年8月18日(土)宮城県・仙台市青年文化センターにて「校務の情報化推進セミナー」が開催されました。県内外から49名の先生方の参加がありました。
趣旨説明
講師
堀田龍也(玉川大学教職大学院 教授)
堀田先生から本セミナーの趣旨説明がありました。

はじめに、文部科学省が毎年行っている学校における教育の情報化に関する調査結果から、東北地区の校務用コンピュータ整備率や校務支援システムの導入率を確認しました。
堀田先生から本セミナーのポイントが挙げられ、「校務の情報化というのは、校務の情報化自体が目的ではありません。本質的な目的は、教育活動の質の改善です。校務支援システムを導入し、校務の情報化が行われることによって、学習指導や生徒指導が、よりエビデンスに基づいた形で行うことができます。これは、的確な指導ができ、ちゃんと保護者に説明ができるという意味で、学校経営の改善につながります。」とお話がありました。「セミナーのポイントを思い出しつつ、この後の分科会で、校務支援システムの操作体験をしたり、それを活かした学校経営の現実を聞いてください。」という言葉に、受講者の分科会に対する期待感も高まったようでした。
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分科会
分科会は、コースA~Dの4つのコースに分かれて行いました。同じ内容の分科会を2コマ開催し、受講者には希望する2つのコースに参加していただきました。分科会は少人数で、受講者同士のディスカッションも交えながら進められました。
●コースA:小学校での活用
講師
新保元康(札幌市立幌西小学校 校長)
野村明央(枚方市立樟葉西小学校 教頭)
講師の先生から、「校務の情報化」に関する学校の取り組みについて発表していただきました。
新保先生からは、校務支援システムを活用した出欠席管理や通知表作成について報告がありました。「校務支援システムは運用にアイディアを加えることで、先生の業務が効率化し、子どもや保護者にメリットのあるものになる。」とお話がありました。6年間を1つのクリアファイルにまとめた通知表は、「子どもの成長がわかる」と保護者に喜ばれたそうです。
野村先生からは、セキュリティについてお話しいただきました。野村先生からの「個人情報は学校の外に出さないことが何よりも大切。皆さんの学校のセキュリティは大丈夫ですか?」という問いに対して、受講者3~4人のグループでディスカッションが行われました。
受講者からは、通知表の運用、USBの管理など各学校での取り組みの情報交換や、通知表の印刷コストや情報共有の方法などについて質問がありました。
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●コースB:中学校での活用
講師
金俊次(米沢市立第四中学校 校長)
小林力(横浜市立松本中学校 校長)
講師の先生から、「校務の情報化」に関する学校の取り組みについて発表していただきました。
金先生からは、校務支援システムの運用が成功するための工夫について報告がありました。学校で、必要な時期に必要な操作スキル情報を提供する「ミニミニ研修会」を行っているそうです。「理解が早く、効率的に操作スキルがアップする。」とお話がありました。
小林先生からは、校務の情報化の成果について報告がありました。校務支援システムの導入により、生徒情報を一元管理でき、教職員の生徒理解が深まり、チームで指導できるようになったそうです。「段階的、目的別研修を実施し、組織的な推進体制づくりを行う必要がある。」とお話がありました。
受講者からは、「各学校に対応した成績入力、通知表作成はできるか?」「使い勝手の良い校務支援システムとは?」などの質問が挙がり、受講者同士で情報交換・意見交換する姿も見受けられました。
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●コースC:教育委員会としての導入
講師
山本朋弘(熊本県教育庁教育政策課 指導主事)
片山淳一(岡山県総合教育センター情報教育部 指導主事)
山本先生が司会者となって、地域の校務の情報化の現状、校務の情報化に関する疑問点や悩みを、受講者からも出していただきながら、分科会を行いました。
これから校務の情報化を進める地域に対して、「教育委員会や学校の中の体制づくり、指導要録などの運用ルールづくりが重要。校務支援システムを導入する下準備として、研修も非常に大切です。」と山本先生からお話がありました。
それを受けて、片山先生からは、岡山県総合教育センターで行っている研修の紹介がありました。校務の情報化の研修や、学校の管理職向けの研修を行っているそうです。「校務支援システムを実際に体験してもらう研修が一番効果的であり、管理職向けの研修では、校務の情報化の目的や意義もしっかりと押さえるようにしている。」というお話がありました。
受講者からは、校務支援システム導入の進め方やデータの安全性、研修の形態について質問があり、よい情報交換の場となりました。
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●コースD:校務支援システム操作体験
講師
新谷裕幸(柳川市立豊原小学校 校長)
鈴木真理(スズキ教育ソフト株式会社 インストラクター)
1人1台のコンピュータを使って、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉の操作体験を行いました。
出欠状況が自動集計される機能、顔写真が登録できる機能、過去年度の記録をすぐに閲覧できる機能などが紹介されました。また、入力した出欠情報や成績情報が、自動的に通知表や指導要録へ転記される様子も確認しました。実際に校務支援システムで作った通知表の印刷も行い、イメージを確認しました。
最後に、新谷先生からまとめとして、〈スズキ校務シリーズ〉を学校で導入した効果やメリットについて発表がありました。名簿作成や転記作業にかかる負担が軽減されたり、出欠状況を把握できるため、迅速な判断ができるようになったそうです。「事務処理の効率化はもちろんですが、子どもとゆっくり関われるようになったり、教材研究や作成に充てる時間ができ、授業の質的向上にもつながっているのを実感しています。」とお話がありました。
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総括講演
講師
堀田龍也(玉川大学教職大学院 教授)
堀田先生から、校務の情報化を有効に活かした学校経営についてお話がありました。

校務を情報化する意義について、「量的に見ると、教員が雑務から解放され、子どもと向き合う時間が増えるということです。教員にとって、より本来的な時間の使い方になるという、タイムマネジメントです。さらに、質的に見ると、子どもたちに対する生徒指導や学習指導の評価データというのがあります。評価データが蓄積され、共有され、常に教員間で参照可能な形になっているということは、リアルタイムにその子の状況に応じた質の高い指導が提供できるということです。」とお話がありました。「校務支援システムを導入することで、早く・正確な情報を把握でき、すべての教員で指導にあたる環境をつくることができます。校務支援システムは、組織としての組織力を発揮できるように支援します。データに基づいた指導が、日頃からできる学校であるかどうかというのが、学校経営の質の保証として、非常に重要です。校務支援システムを導入して、教員は人間だからこそできるところ、プロとしてやらなくてはいけないところに専心して欲しい。」という堀田先生の言葉で締めくくられました。
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