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校務の情報化推進セミナー2012 鹿児島会場 セミナーレポート
2012年9月29日(土)鹿児島県・天文館ビジョンホールにて「校務の情報化推進セミナー」が開催されました。県内外から63名の先生方の参加がありました。
趣旨説明
講師
堀田龍也(玉川大学教職大学院 教授)
堀田先生から本セミナーの趣旨説明がありました。
「校務の情報化というのは、組織の情報化です。組織として、どういう情報を共有すれば、子どもたちにとってよい仕事ができるか、保護者にとってよいサービスができるか、地域や教育委員会が学校の情報を把握できるか、という組織の情報化の目線が必要になります。」とお話がありました。
堀田先生から本セミナーのポイントが挙げられ、「校務の情報化の目的は、業務の軽減と効率化であると同時に、教育活動の質の改善です。児童生徒に対する教育の質の向上と学校経営の改善と効率化につながるという、校務の情報化の目的を見失わないでほしい。このポイントを外さないで聞いて欲しい。」という言葉が、この後の分科会・総括講演に向けて伝えられました。
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分科会
分科会は、コースA~Dの4つのコースに分かれて行いました。同じ内容の分科会を2コマ開催し、受講者には希望する2つのコースに参加していただきました。分科会は少人数で行われ、講師への質問や受講者同士のディスカッションも交えながら進められました。
●コースA:小学校での活用
講師
新保元康(札幌市立幌西小学校 校長)
橋本美勝(名古屋市立平針南小学校 校長)
講師の先生から、「校務の情報化」に関する学校の取り組みについて発表していただきました。
新保先生からは、「校務支援システムは校務の効率化、精度の向上に有効。アイディアを加えるとさらに良くなる。」とのお話がありました。出欠管理については、業務フローを見直したことで、養護教諭の業務が減り、早い段階で学校全体の出欠状況が把握できるようになったそうです。また通知表作成については、子どもの顔写真を毎年載せるようにしたところ、保護者から非常に喜ばれたそうです。
橋本先生からは、「学校のことをよく知っている内容の充実した校務支援システムを導入することが大事。校務支援システム導入後はバックアップや情報漏えいに対する保護・管理体制が必要。」とのお話がありました。
受講者からは「手書きにこだわりがある教員がいて、通知表のICT化が進まない」「校務データを学校において置くのは心配」など悩みや不安が挙げられ、講師の先生から具体例を交えたアドバイスや意見がありました。
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●コースB:中学校での活用
講師
小林力(横浜市立松本中学校 校長)
野村明央(枚方市立樟葉西小学校 教頭)
講師の先生から、「校務の情報化」に関する学校の取り組みについて発表していただきました。
小林先生からは、校務支援システム導入の経緯やメリットについての報告がありました。「校務の情報化は、校務支援システムの導入によって、その良さを発揮する。」というお話がありました。
野村先生からは、セキュリティやデータの共有について報告がありました。「データを共有することで、校務の負担が削減するとともに、教職員間で協働する意識が芽生える。」とのお話がありました。
「皆さんの学校は、どのようなセキュリティ対策を行っていますか?」という問いに対して、受講者は、各学校のセキュリティ体制について情報交換を行っていました。また、受講者から「どのくらい校務の負担が削減するのか?」、「校務支援システムを導入後の先生たちの反応は?」などの質問が挙がり、校務支援システムに関心を持つ先生たちの姿が見受けられました。
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●コースC:教育委員会としての導入
講師
片山淳一(岡山県総合教育センター情報教育部 指導主事)
山本朋弘(熊本県教育庁教育政策課 指導主事)
山本先生が司会者となって、地域の校務の情報化の現状、校務の情報化に関する疑問点や悩みを、受講者からも出していただきながら、分科会を行いました。
片山先生からは、校務支援システムの導入前に必要なことについてお話がありました。「校務の情報化に向けて、教育委員会と校長の連携体制も大事になるかなと思います。校務の情報化は、ある程度トップダウンが必要だと思います。また、校務支援システム導入に対する学校の共通理解ということも大事です。」とお話がありました。片山先生のところでは、導入前の理解を深めるために、管理職も含めて、校務の情報化の効果を実感できる研修(校務支援システムの体験など)を行っているそうです。
山本先生からは、「校務の情報化に向けて、管理職の理解を深め、自治体のマネジメントのあり方を考えなくてはいけません。」とお話がありました。
受講者からは、「校務支援システムを導入することによる、教育委員会としてどのようなメリットがあるか?」などの質問が挙げられ、様々な意見が交わされました。
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●コースD:校務支援システム操作体験
講師
新谷裕幸(柳川市立豊原小学校 校長)
天野衣美(スズキ教育ソフト株式会社 インストラクター)
実際の校務の流れに沿って、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉の操作体験を行いました。
名簿情報を一元管理して様々な名簿を簡単に作成できる機能にはじまり、日々の出欠状況の登録・集計、成績情報の入力、通知表や指導要録の発行までの操作を、1人1台のコンピュータで実際に体験しました。受講者は、ボタンひとつで転記される機能や、校務支援システムならではのデータの再利用や処理の速さなどを実感していました。
最後に新谷先生より、校長の立場から校務支援システムを導入した効果や、導入に至るノウハウについてお話がありました。ご自身の経験を踏まえて、「強いリーダーシップがあれば、必ず実活用に結び付く。」とお話されていました。
受講者からは、情報流失の対策やデータのバックアップ方法など、校務支援システム導入の先を見据えた質問が挙げられました。新谷先生から質問に対する回答もいただき、大変充実した分科会となりました。
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総括講演
講師
堀田龍也(玉川大学教職大学院 教授)
堀田先生から、校務の情報化を有効に活かした学校経営についてお話がありました。
校務の情報化について、「全教員に関係するものであり、その地区全体に影響を及ぼします。校務の情報化は、組織マネジメントとしての視点が必要になります。トップダウンで進めていくべきであり、教育委員会のイニシアチブが問われる領域だということです。」とお話がありました。
「ICTの得意な教員が、自力で情報化を進めているところもありますが、それは本当に学校経営としていいのかということです。教員は、ICTのプロではありませんし、組織の仕事なのに特定の人に頼っているというのは、課題も多く、結局、根本的な解決にはなっていません。校務の情報化を進める上で、プロの知識やノウハウを集めて作られた校務支援システムが必要だということです。」と堀田先生。「校務支援システムは、専門家である教員が判断するために、正確な情報をリアルタイムに提供して支援してくれます。通知表を付けたり、所見を書いたりするのは教員であり、判断の主体が変わっているわけではありません。校務支援システムの有無は、勘と経験だけでやるか、エビデンスベースでやるかの違いがあります。エビデンスベースでやるのが、今の大きな流れです。」とお話があり、校務支援システムを有効活用した学校経営の姿が示されました。
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